『約束』 by のこのこ





・・・あのね、フランソワーズ・・・
・・・浴衣ってね、ホントは、ね・・・



「・・・お祭り、楽しかったわ。ありがとう・・・」

腕の中・・・すっぽりと納まっているフランソワーズが、小さな声で囁いた。

「・・・ホント?」
「ええ。とっても」
「そっか、良かった。僕もね、お祭りなんて久しぶりだったから・・・楽しかったよ」

透き通るような白い項に、後れ毛が遊んでる。
ほどけた髪の隙間から、馴染んだ香りが洩れてくる。

「・・・そうだ、今度は花火観に行こう。きっと君も気に入るよ」
「花火?」
「うん、打ち上げ花火。綺麗だよ」
「みんなでやるのとは、違うの?」
「違うよ、あんなもんじゃない。・・・いや、あれはあれで楽しいけど」

「すっごく大きいのを、少し離れたところから観るんだよ」
「ふーん・・・」
「でね、それが夜空一杯に拡がって・・・とっても綺麗だから」
「そう・・・」
「びっくりするよ。日本の花火は世界に誇れる、空間芸術だからね」

フランソワーズが僕を見る。ちょっときょとんと、不思議そうに。
その表情がなんとも言えず嬉しくて、僕は思いっきり笑ってみせる。

「絶対、行こうね。近場であるか、調べておくよ」

彼女が、嬉しそうに微笑ってくれた。良かった、この顔が見たかったんだ。

「また浴衣着て、団扇持ってさ。早めに行って、場所取りして」

すると・・・彼女が、フッと僕から瞳を逸らす。
あれ、どうかしたかな?・・・なんかヘンなこと言ったっけ。

「どうしたの?」
「・・・」
「気が進まない?人ごみ苦手だったよね、だからかな?」
「ううん、そうじゃなくて」
「・・・?・・・」
「行くのはいいんだけど・・・ううん、嬉しいんだけど。でも・・・」

それっきり、彼女は黙り込んじゃった。

こういう時、僕はとっても困ってしまう。でも、下手なことを言うくらいなら、ずっと待ってた方がいい。どうせ彼女は、長いこと黙ったままではいられない。

・・・今日も、やっぱりそうだった。待たずにすんで、助かった。
その瞳は逸らしたままだったけど、彼女はそっと呟いた。

「ねえ・・・さっき言ってたこと・・・ホントなの・・・?」
「・・・え?」

でも、ちょっとすっ飛んでるよ。咄嗟に、なんのことだかわからない。
あからさまに?マークを浮かべてしまったらしい僕に、彼女が仕方なく種明かし。

「さっき・・・言ってたでしょ?・・・浴衣着る時はホントは、って・・・」
「ああ・・・」

そっか、そのことか。僕は納得して、そしてちょっと驚いた。
・・・聴こえてたんだ。もう、すっかり上の空みたいだったのに。
でもおかげで、繰り返す必要もない。僕は笑って頷いた。

「ホントだよ」
「・・・嘘」
「嘘じゃないよ。言っただろ?君には・・・嘘はつかないって」
「・・・」
「信じられない・・・?」

黙りこくったままで、彼女がこくん、と頷いた。
その仕草が可愛くて、思わずまた笑ってしまう。

「・・・信用ないんだなぁ」
「だって・・・ジェットにだって、あんな嘘ついて・・・」
「あれはあれだよ。君に嘘ついたってしょうがないだろ?」
「だけど・・・」

彼女はずっと、俯いたまま。
こっちを向いてくれないかなあ。そろそろ、君の瞳が見たいんだけど。

「・・・今度は、僕が言った通りにしてくれるよね?」
「いやよ・・・」
「どうして?」
「だって・・・」

小っちゃく首を振って、いやいやするみたいな君の仕草。
・・・可愛いんだよね。少ーし苛めちゃおうかな。

「・・・どうせ最後はこうなるんだから、一緒なんだけどな」
「!!」
「あ、違うか。こうなる前に、出来るところがいいんだよね」
「ジョーっ!!」
「君だって、ちょっとはその気になってるくせに・・・」
「!!!」

蒼い瞳が目一杯に開かれて、ほっぺたが真っ赤になって。君は、大きく首を振る。

「もうっ!知らないっ!!」

ちょっと、苛めすぎたかな。本気で拗ねられちゃうと、朝ごはんがなくなっちゃう。
いや、でもきっと、大丈夫。彼女も多分、わかってる。早く、なんとかしなきゃって。

こういう時は、僕もちょっぴり勇気を出して。彼女の気持ちに、応えなきゃ。

「・・・そんなに拗ねないでよ、ねえ」
「・・・」
「日本の夏、だよ。知りたがってたじゃないか」
「嘘ばっかり・・・」
「嘘じゃないってば。・・・信じてよ」

まだ俯いてる、黙ってる。仕方なく、彼女の耳に囁いた。

「大丈夫、誰にも言わないから。言わなきゃわかんないよ、誰にも・・・ね」

彼女が、やっと、僕を見た。ちょっと、恨みがましい目つき。
でも、そんな瞳も・・・僕のもの。他の誰にも、見せやしない。

あともう一押し・・・僕はもう一度、彼女に優しく笑ってみせる。

「これは・・・僕のお願い。ね?」

あれ、また俯いちゃった。・・・でも、その顔はもう、拗ねてない。

「もう・・・知らないから・・・」

わかってる・・・こういう時の、彼女のおっけーサイン。素直じゃないんだ。
でもそれが、やっぱりとっても可愛らしい。

「ありがと、フラン。きっと・・・行こうね」

それでも僕は、彼女が逃げられないように・・・もう一回だけ、念を押す。

「・・・誰にも、内緒よ」
「もちろん」

・・・これで決まりだ。もう、のがさない。

僕は彼女の頬に手を触れて、その顔を僕に向けさせた。
彼女が少し遠慮がちに、視線を僕に投げてくる。そして、そっと瞳を閉じた。

僕は、ゆっくり顔を寄せて・・・そんな彼女に、くちづけた。

「・・・ありがとう」

僕の小さな呟きに、彼女が静かに首を振る。その顔・・・少し眠そうだ。
そうだよね、もうこんな時間だもの。そろそろ寝かせてあげなくちゃ。

「おやすみ、フラン」
「おやすみなさい、ジョー・・・」

・・・すぐ、彼女の寝息が聞こえてくる。
やっぱり疲れてたんだ。ごめん。僕のせいだね。

・・・さあて、じゃあ明日早速調べなきゃ。近場で、そこそこ大きい花火大会。
ホントは二人だけで行きたいけど、きっとまたあの二人もついてくるんだろうな。

・・・いいや、どっかではぐれちゃえ。
アルベルトにだけ、言っとこう。後は頼むね、任せたよって。
彼はわかってくれるから。


ああ、僕も眠くなってきた・・・


おやすみフラン、また明日。
約束、必ず守ってね。




END



<あとがき>

えっとぉ・・・そのぉ・・・あのぉ・・・(汗)。
すっ、すみません〜〜っ!!ぴゅーーーーっ!!(逃亡)

・・・じゃなくって。

はい、あの、のじまさんに「お任せ」されましたんで・・・(笑)<笑うな、おい。
で、ついつい・・・こんなん、出ましたけど〜〜(踊)<踊ってどうする。
うわぁ、めみさん、ごめんなさいーーーっ!!(再び逃亡)<逃げるな!!


えっとですね。ちょっとばかり言い訳をば(苦笑)。

ご存知の方はお分かりだと思いますが、自分、こんなブツを書いたのは初めてです(^^;)。
「こんな」っていうのはですね・・・要するに痒いっていうか、甘いっていうか(笑)。
一人称も初めてだし、甘甘おんりーの話も初めて。禁・18禁は経験あるんだけど(爆)。

・・・だからホント、正直言って、激しく自信ないです(爆)。
<じゃあいつものは自信あるのか??・・・という突っ込みはご勘弁(涙)。

でも、産後一ヶ月以上経過して、ようやく・・・光が見えてきて。
退院直後、むっちゃくちゃスランプで、もう自分なんか・・・って落ち込んで。
それがやっと・・・ここまで来たんだなぁ、と思うと、なんだかみょーに嬉しくて。

でもまだ先は長いんで、とりあえずまずはリハビリ!!・・・ということで。
<ひとさまに差し上げるものでリハビリってどうよ、自分(爆)。

・・・てなわけで、産後復活第一弾(笑)。
今さらながらのサイト開設御祝に、謹んでE田さんに捧げます♪
こんなものでよろしかったら、どうぞ貰ってやって下さい(深々)。

それから、くれぐれも今後とも、よろしくお願いいたします。



<管理人より>
ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふっふ♪
どうだっ、ボカしまくったうえにテキストで目隠し!
完っ璧な家庭内年齢基準対策だ〜っっ!!(大笑)←マジかよ>自分(汗)

ええと、読むとわかると思いますが、このSSは、以前のじまさんが書いてくださった 『祭囃子』の続編 ・・・ていうか「その晩のお話」です(爆)

UP後に掲示板で「この後研究所に帰ったしまむらが何をしやがるのか(笑)」
でエライ盛り上がりまして(笑)
のじまさんに任されたのこのこさんから速攻で添付メールが♪
・・・早かったよね、2週間たってなかったもん(爆笑)

で、今頃のUPになってしまったのはひとえに
「どーしても挿絵つけたいっっ」と駄々をこねた管理人のせいでございます(泣)
お待たせして申し訳ありませんでした〜っ(ひれ伏し)>のこのこさん

ちなみに。
「浴衣を着る時は下着を(ぱ○つも♪)着けちゃダメ」
のネタ提供はめみさんです(笑)←暴露♪
さあ皆で拝みましょう♪へへ〜〜〜〜〜っm(__)mm(__)mm(__)m


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