羊天使 by nojima



 ふわふわ。
 もこもこ。
 もこもこりん。

 今日も天上界は平和です。
『地上も平和だと良いがな・・・』
 と、神さまが地球を覗き込みます。

 ところが、ああ、なんと言うことでしょう。
 余りにも人々の負の思いが強すぎて、悪しき神の衣に包み込まれようとしています。

 神さまは嘆き悲しみました。

 けれど、何とかしなければなりません。

 人々の心に、ろうそくの火のようにでも良い、小さくとも善の灯火を灯す者たちを選び出しました。
 ですが、まだ足りません。
 彼らの先頭に立ち、強く優しい心で導いていくリーダーが必要でした。

 神さまは、天使の中からそのリーダーを選ぶことにしました。

『天使たちよ、天使たち。私を守ってくれる天使たちよ。誰かあの者たちの元に降りてくれる者は 居るまいか?』

 神さまのお言葉に、天使たちは顔を見合わせました。
 神さまの心を晴れやかにするために地上に降りて行く、それはとても素晴らしいお勤めです。
 ですが、今度のお役目は、長く長く、神さまの元を離れなければなりません。
 その上、その間は神さまのことを忘れていなければなりません。
 なぜなら、神の使いではなく、同じ人間が努力して乗り越えるからこそ、 人々は自分もと思うからです。

『どうしよう、どうしよう』
『困ったね』
『誰が行けば良いんだろう』

 天使たちがざわめきます。
 神さまも困っておいでです。

 すると、一人・・・言え・・・一匹・・・ああ、どう言えば良いのでしょう。(涙)

 羊の身体に少年の顔をした天使が、小さな羽をパタ着かせながら神さまの元に近づいていきました。

『おお、お前か!』

 神さまが笑顔になられます。

『なんとお前が行ってくれると言うのか?お前は羊であった頃、幾度となく人を助けた。 だから死後は私の元に置いたのだ。ゆっくりとでも、いずれ完全に人の姿にするために。 ようやくそこまでになったのに、それでも行くというのかね?』

 天使がしっかりと頷きます。

『おお、ありがとう、愛しい子よ』神さまがしっかりと天使を抱きしめました。『辛く苦しい人生だ。 最初はお前を悲しみが支配するだろう。だがそれ以上の喜びをお前のために用意しよう』

 神さまはそう言って地球を指差しました。

『見えるだろう?あの者たちがお前と戦う仲間たちだ。みんな心暖かく優しい者たちばかり。 お前が彼らのリーダーとして戦うのだ。だが、ご覧、その中に一輪のバラが見えるだろう?』

 天使が頷きます。

 亜麻色の髪に蒼い瞳の美しい少女。

 誰よりも優しい微笑みでした。

 天使が一生懸命に手を伸ばします。
 まだまだ彼女には手が届かないのに。

『やはり彼女が気に入ったね。彼女は仲間たちの心の拠り所、唯一の救いだ。 彼女を一番大切に出来るかな?』

 天使が瞳をきらきらさせながら、何度も何度も顔を縦に振ります。

『そうか、そうか。恋は強制ではないが、お前と彼女の心の糸が繋がれば良いな』

 神さまのお言葉に、天使は嬉しげに尻尾を振りました。(はて?羊の尻尾は振れたでしょうか?(汗))

『さあ、お行き。私が選んだ者たちを、お前が導くのだよ』

 天使が地球へ、地上へと降りて行きます。

 青い青い地球へ。

 蒼い瞳のフランソワーズの元へ。

 あの笑顔を一瞬でも曇らせないために。


== フランソワーズ!! ==


 喋れないはずの天使が、必死で彼女の名を叫びました。






 目を覚ませ・・・。

 誰かが呼んでいます。

 目を覚ますんだ!!



 小さな小さな灯火も、集めれば、天までも届く炎となります。
 その為の、彼の人生が、今始まります。


〜 Fin 〜



サイト1周年記念にのじまさんからSSげっと〜(踊)
体調良くない中ありがとうございます>のじまさん(涙)

天使って…あの羊が天使だなんて(汗)のじまさん、騙されてますよ?(涙)<オイオイ
…にしても…そうか、しまむーの前世は羊だったんかそうかどおりで(ぶつぶつ)<だから騙されてるんだってば

あの羊を一人と呼ぶか一匹と呼ぶかはワタクシも悩むトコロでございます(笑)


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