〜遠い瞳〜

部屋の隅に飾られた古い写真の中、
仄かに微笑むのは、あなたとあなたの犬。
茶色の髪、茶色の毛並み、四つの茶色い瞳。

「どっちが飼主で、どっちが飼犬か、
 これじゃちっともわかりゃしないぜ」
そう言った仲間の一人に、私は怒ってみせた。
「失礼なこと言うのね」と、殊更に尖った声で。

けれど、ごめんなさいね、あなた。
ほんとうは私も、そう思うのよ。
まっすぐなその瞳が、とてもよく似てると。

裏切られることを、知らない筈ないのに、
幾度、裏切られても、あなたは信じ続ける。
疑うことを知らない、静かなその瞳で。
すべてを許し、何度でも信じる。

ただ見つめ続け、ただ信じ続ける。
いつも、いつまでも、どんな時でも。

だから私は想う。
あなたのその瞳が、
いつの日にかきっと、
この世界を変えると。

-text by necromancer-


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